Dear Destiny
下校する生徒の群れがゆったりとした歩調で
帰路に発つ時間であった。
私立最上高校の校門前に、
一台のベンツが邪魔臭く止まっている。
平凡な校舎には不似合いな
黒のつややかさがひときわ目立った。
「お嬢様」
呼ばれた少女は、
大人の女性が頭を垂れている事に気付き、
団欒していた友人の輪を抜け、外に出た。
彼女の名は、上山百合。
大手株式会社の一人娘。
つまり、社長令嬢だ。
長い巻き毛がそれとなく
優しそうな顔立ちに見せている。
しかし外見とは裏腹に、
百合も普通の女子高生。
けだるく車のシーツに、
靴を脱いで体を横たえる。
想像するような、姿勢正しく、
凛としているお嬢様ではない。
< 1 >